10/4 こぶ茶と保健室   

 

 

『あぁ〜昆布茶が飲みたい。』

急に過ごしやすい気候になったからか。
私は緑茶がニガテ。
っというか、苦い系のものでニガテじゃないものは紅茶とコーヒーのみ。(^^;)
飲み物自体、あまり摂らないタイプ。
少し、時々、摂る。
それはあまり身体には良くないことなので意識的に飲むよう心掛けているが。

...ハナシを戻そう。

アミノ酸たっぷりの旨味。
昆布なのに名称:お茶。
味噌汁のように体中にほっこりとした温かみと潤いを届けるもの。

これに出会ったのは、高校生の頃。17歳。
その頃私は保健室通いの毎日。
当時『保健室登校』というコトバすら無かったが、私の日常はまさにソレだった。

交通事故の後遺症で、真っ直ぐ身体を起こしていられなかった私。
家で寝ていても何も楽にはならないので、受験期でもあり、
ちゃんと教室に行って座ってみる。

授業が始まる頃、もう限界が近づく。
キレイに開き並べて準備しておいた教科書&ノートをパタパタと閉じ、
丁度良い高さの頭乗せ(=枕)を造り、その上に鈍く重い頭を落とす。
目は閉じる。隣の友だちに悪いし、目蓋も重い。

教壇から『風瀬(仮)、保健室行け!』っと声が飛ぶ。
面倒だが毎回、下↓のように開き直る。
『行っても治りません、耳は起きてマス。居てもいいですか。』

その状況を、黙認してくれる先生も居た。子守唄のように空気が響く。
『迷惑、行ってこい!』といわれれば、素直に従う。
これ以上の会話は無理だ。私の気力不足。

こんな私を、ずいぶん後になってクラスの男子がこう↓評した。
『保健室は私のお部屋ょ、と悪びれず通っていた変な子』

頭が重いような、首が張ってるような、グニャグニャな脳みそが落ち着く場所を
探してるような...妙な心持ちで過ごしていた。
階段はキライ。胸がドキドキするから。...動悸だ。(>_<)
保健室は1階。
ゆっくり降りる。一歩一歩。

階段脇の明るい部屋が保健室。
私と同じ名前の先生が居るー。

そこは、弱ったみんなの隠れ家。
教室に腰を落ち着ける元気が少し足りない時、元気なみんなが見えない場所に移動する。
図書室じゃちょっと違う。ヒトのニオイが足りないの。
自分の中に深く落ちていくのでなく、ヒトとして少しだけ他人と関わっていたいような。

そんな宙ぶらりんは、私だけでは無かった。
どちらかというと『不良』のレッテルを貼られやすい子が多かった。
あと、病弱な体質の子...。折れないようにたゆたいながら生きる。
そんな仲間に水銀体温計の温度の上げ方(=ズル休みの仕方)を教わった。

『失礼します。ココに行けとイワレマシタ。』
はじめはそう断っていたが、そのうちアイコンタクトで用は足りた。
それがうれしく、ありがたかった。(*^^*)
私が居て良い場所。

『風瀬さ〜ん、何か飲む?何が良い?』
A先生のおだやかな声。
いつもそれほど喉は渇いていない。
『なんでも。ちょっとだけで良いデス。』
すると。
A先生の顔がキラキラっと輝いて『あっそうや、イイものがあるゎ♪』

『コレ飲んだことあるぅ?』そういいながら笑ってる。
緑茶色の熱い液体の中にぽやぽやと何かが漂いながら沈んでる。
『イエ。何ですか?(・o・)』っと受け、少し飲んでみる。
『あっ...美味しい♪(^^)』

『こぶ茶。みんなにはナイショやで。(*^^*)』
日だまりの白いカーテンの前で白衣の先生は子どもみたいにニヤニヤした。
私もニヤニヤした。(*^^*)

夏のカルピスよりも、そんな、美味しい懐かしい思い出の味。