10/2 随想 『北の国から』

 

先月はじめ『北の国から』最終話を観た。
子どもの頃、吸い込まれるように一生懸命観ていたことを思い出す。
今思うと...当時は子ども過ぎてドラマの細かな流れは覚えていない。
これまでTVシリーズをビデオや再放送で見直した記憶も無い。

私は小学校の低学年の頃まで腰まで髪を伸ばしており、ヤセ型で目がパッチリしていた。
そして私には兄が居る。
15ヶ月違いの年子で、学年は2つ上。当時、なんとなく顔が純くんに似ていた。

これだけでも『純』と『蛍』にはかなりの親近感を覚えるのだが。兄が7歳になった春、
私たちは千葉の市川から、父の実家がある兵庫の田舎に引っ越した。

祖父母と伯母の住む家に、両親とともに移り住んだ上、翌年には7つちがいの妹も
誕生して大家族となったので、家族構成は全く異なる。
それでも、都会から突然コトバも違う慣れない土地に越して、かなりの田舎ライフが
待ち構えていたこと、兄にくっついて遊んでいたこと...など感情移入するには十分な
ドラマだった。

実際、周りの家々がどんどん建て替えをして合理的にキレイになって行く中、ウチは
私が中学の頃まで、五右衛門風呂を薪で焚いていた。(・o・)
(ちなみに、トイレが晴れて水洗になったのは、ナント今年のこと。)
薪は、秋の休日に父がチェンソーで裏山から切り出してきたものを冬までかけて庭の
隅で少しずつ斧で割り、母屋の脇に束ねたシバ(下枝)とともに壁いっぱいに1年分を
積み上げておく。

近年アウトドアが大流行りだが、日々新聞紙とシバにマッチで火を点け、火吹き竹で
火を熾していた私には、あまり魅力的な遊びに思えなかったりする。(^^;)
兼業農家でもあったので、なにかと家の手伝いが忙しかった。
慣れない生活にひとり泣く母の背を見て『はやく東京に帰ろう』と自分だけに誓った。
そんな苦い子ども時代を彷彿とさせる、ちょっとツライドラマでもある。

私は寒いのは大嫌だ。
見るからに寒そうな富良野で、都会っ子の2人が奮闘する姿は、自分たちの
分身を見ているような錯覚を持ち、心から応援しながら見入っていた。

20歳になった私は念願叶ってようやく、東京に舞い戻った。
短大を出て保母になり、世田谷の寮に住むことになったのだ。
神戸の短大時代から少しずつ芝居のレッスンなどはじめていた。
東京にこだわった最大の理由---それは、役者になりたかったから。

しかし仕事は甘くなく、少し面白く充実もし始めて、しばらくは金銭的にも体力的にも
余裕が無く、思ったほどのチャレンジもできずに過ごした。
その後入院を機に転職し、渋谷の宇田川町で派遣社員として2年働いた。
その時、すぐ近所にあった撮影スタジオ。それが、渋谷ビデオスタジオ。
当時トレンディードラマと呼ばれたものや、よく知るバラエティなどが数々収録されて
いた場所。そうとは知らない頃から、週に1,2度必ずランチを食べ1階のレストラン
...そこに、1枚のチラシがあった。

『東京アクターズスタジオ』5期生募集。

手にとって驚く。
主催は『ふぞろいの林檎たち』演出の大山勝美氏、その他に連なる講師陣の豪華
なこと!『池中玄太80`』の石橋冠氏・・・・・・そして『北の国から』の杉田成道氏。
私の世代にとっては、夢のような布陣だった。

すぐにオーディションを受け、仕事を辞めずに済むよう私は夜のコースを選んだ。
結局、残念ながら私の通っている間には杉田先生の授業は一度も無かった。
が、しばらくあとに『 '92 巣立ち』が放送され、一期生の裕木奈江サンが出演された
のを熱い思いで観た。

あれからちょうど10年。
今、私は芝居とはかけ離れた生活をしている。
でもやはり今回の『遺言』を観ないわけにはいかないのだ。
何かの区切りのようで・・・。

挫折。哀しい別れ。再会。出会い。
さまざまな人間模様が詰まっている。でもどこかがいつも哀しい。
何かがツライ。心がイタイ。

でも強い。圧倒的に厳しい自然と、その中に静かに、かつ雄々しく生きる人々。
ベテラン俳優陣の存在感は見事だ。正直、圧倒された。
その中で、内田有紀サンがキラキラと映り、ひたむきで清々しい。
みんなが熱い想いで臨み、大切に大切に役を生き抜いていた。

後日、ドキュメンタリーも観た。
地井武雄さんのプライベートなエピソードは前に何かの報道で知っていたので、
今回の過酷な役がらがどうしても気になっていた。

杉田監督が語っていた・・・  『みんな、生きてるってことかな』。

喜びも、挫折も、思いがけない哀しみも、みんなひっくるめて逃げないでいる。
戻ってくる。
そうなのだと思う。

強い想いの集合体は、リンクし共鳴し合い ⇒⇒⇒ 『共時性』を生む。

一途なスタッフ、出演者、自然、すべてに心からの感謝とエールを送りたい。
ステキなドラマをありがとう。

近いうち、ひとりの大人として初めから観直してみよう。
『私もこの10年、いや 21年、少し心を強くして生きられたかな?』

みんさんは、どんな想いを重ねましたか?



p.s. 今もがんばっている仲間へ。 『みんな、応援してるよ〜〜〜!』(^0^)/


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