9/19 夢の明石海峡大橋

 

さぁ、この『橋づくし』の旅のクライマックス、明石海峡大橋に向かいます。

私にとっては4年越しの夢。
ちょうど5年前の晩秋、私は1つの仕事に着手。
生まれて初めて本を作ろうとしていた。

7年近く細く長く関わっていた土木構造物の設計補助の仕事。縁あって、そこで得た
技能を活かし、CAD(コンピューターで設計製図を行うソフト)の初心者向け解説書を
創ることに!

テーマが決まった。・・・それが、『明石海峡大橋』だった。

一度だけ帰省して舞子の駅に1人降り立った。
その頃はまだ工事中。
シートが張られ、重機が行き来する道はデコボコの土が剥き出しのまま。

全長3.911km。
両端でこの吊り橋のワイヤーを支えるコンクリートの巨大な建造物がアンカレイジ。
巨大すぎて、なんだか自分がアリンコになったみたいだった。

私の好きな神戸の街。
震災があってから、なかなか明るいニュースが聞こえてこなかった。
何もできない自分も歯がゆいし、訪れる勇気も出せずに居た。
そこから久しぶりに華やかな笑顔がこぼれる・・・
そう感じて離れた東京に居ながらも どこかワクワクしていた。


この橋ができたら、橋の向こう側から神戸の街を見てみたい・・・


そんな思いを秘め、執筆のことは夫だけに告げて静かに仕事に打ち込んだ。
思い入れが強いほど、なかなか自分のGOサインが見えてこない。
初めてにしてはなんとか順調に工程をこなしていったが、締め切り近くになっても
『何かやりのこしているのではないか?』という自問自答が消えない。
操作画面キャプチャ(画像)やCADのデータも文も操作手順も自分で作っていく。
・・・今思うとかなり過酷な作業。
でも、明石海峡大橋を創るような気がして、苦にはならなかった。

知っていますか?
震災の影響で、主塔(橋を吊っている2本の柱)の間隔が約80cm、そして淡路側の
径間が約34cm延びたのだ!
当時もう建ちあがっていた主塔は幸いにも難をのがれ、その後、合計1mちょっと
変化した地形にあわせ、橋げたの長さ(パネル数)再調整が行われた。
そんな細かいエピソードも、CAD作図のレッスンに織り交ぜてある。
 
何度か手直しした時、突然頭の中を数ヶ月間占領しつづけていた霧が晴れた。
迷いが消えた瞬間だ。
本当に貴重な経験をさせてもらった。
いろんな懐かしい思いが私ひとりを包む中、その地に立った。
こちらにも巨大なアンカレイジ。向こうを走るバスが小さく見える。
そうだ、85mもあるんだ。

『はぁー、やっぱり来てよかった。』

愛称はパール・ブリッジ。
瀬戸内独特の、年間を通して少し煙って見える景観になじむように、橋全体が少し
緑色がかっている。
パールの名に恥じず、海から生まれたもののようにそこに在る。

売店では2種類(工事中と完成後)のポストカード集を買った。
写真を撮るのにちょうどいい位置なのか、ステージのような円形の台があった。
まっ、一度は登っときましょうか。
記念撮影もバッチリだ。(^^)v

思い出した夏の強い陽射しに、海が蒼く輝いている。
その向こうには、煙る蜃気楼のように神戸の街並みが浮かぶ。
『神戸、元気だね』
龍の体のようにうねりながらその長さを誇示するパール・ブリッジ。

4kmは長い。平日で車も少なく、前も後ろも橋しか見えない。
広い広い30m幅の夢の掛け橋。
陸と切り離された空間を、音の無いシーンとした不思議な心持ちで走った。。。
まるでナウシカが草のように伸びた王蟲の触覚の上を歩いた時のように。

これを渡れば本州。
すべて陸続きになったのだと思うと感慨深い。
まる2日、本当に新鮮な旅だった。


ぜひ次回は、神戸$100万の夜景を目指してライトアップされた中を走りたいナ。

 


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